大石泰夫『祭りの年輪』

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 大石泰夫先生(盛岡大学文学部教授、岩手民俗の会代表)より、『祭りの年輪』(未発選書第25巻、ひつじ書房、2016年4月8日発行)をご恵与いただきました。お心遣いに感謝申し上げます。

 緒論の冒頭に「本書は、祭礼が伝承される状況をフィールドワークを中心にして調査し、特に現状の伝承の中に残された〈変遷の痕跡〉や〈創造された伝承〉に留意して、現在の〈実践〉のありさまを論じたものである。」(1頁)と述べており、目次は次の通りです。

(詳しい目次は、ひつじ書房ホームページをご覧下さい。 http://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-89476-814-7.htm

(巻頭写真 31点)

緒論――本書の目的と構成

 

第一編 「神社・歴史・伝説」と祭り

第一章 古代ヤマトの信仰的世界観と神社の祭り

第二章 葛城一言主神社の秋祭り

第三章 秋田県湯沢市小野小町伝説と祭り

第四章 陸中海岸の虎舞考

第五章 伊豆半島の三番叟の伝播と伝承

第六章 神社の祭礼としての花輪祭典

 

第二編 祭りの「現代と後継者」

第七章 イベントと民俗芸能

第八章 祭りを支える外来の人々――津軽半島上磯の祭りと民俗芸能

第九章 〈地域〉と民俗芸能――伝承のあり方を考える

 

参考文献一覧

あとがき

索引

 大石先生は緒論の結びにおいて、「〈民俗の年輪〉を読み取ってみたい」と記し、「年輪は、それぞれが断絶しているものではない。年輪の付置連関を知ることは、過去を知ることばかりではなく、現在そして未来をも知ることになるはずである。」(16頁)と指摘し、実践の中の過去、現在、未来を考えたいと述べています。

 神道・日本文化を考える上で示唆に富んだ一冊と思われます。

祭りの年輪 (未発選書 25)

祭りの年輪 (未発選書 25)

 

 

『大槌町の民俗芸能』

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 大槌町文化遺産活性化実行委員会・大槌町民俗芸能調査委員会編『大槌町の民俗芸能――大槌町民俗芸能調査報告書』(大槌町教育委員会、平成28年3月25日発行、A4判、101頁)を、本日拝受致しました。誠に有難うございました。

 平成25年度より27年度までの3か年に実施した大槌町民俗芸能調査の報告書であり、調査の対象は、町内芸能団体のうち、現在活動中の19団体です。大槌稲荷神社と小鎚神社の祭礼である大槌まつりと、天照御祖神社祭礼の吉里吉里まつりに、それぞれ供奉する芸態種類ごとにまとめられているのが特色です。

 目次は次の通りです。

例言

目次

大槌町の概要と歴史

大槌町郷土芸能保存団体連合会

大槌町民俗芸能調査委員会委員名簿

一 大槌町の民俗芸能(総説)(大石泰夫)

二 大槌まつりと吉里吉里まつり(佐藤一伯・大石泰夫)

三 調査報告

  • 臼澤鹿子踊(茂木栄)
  • 金澤鹿子踊(佐藤一伯)
  • 上亰鹿子踊(佐藤一伯)
  • 徳並鹿子踊(茂木栄)
  • 安渡虎舞(大石泰夫)
  • 大槌城山虎舞(中嶋奈津子)
  • 向川原虎舞(中嶋奈津子)
  • 陸中弁天虎舞(髙久舞)
  • 金澤神楽(佐藤一伯)
  • 花輪田神楽(茂木栄)
  • 雁舞道七福神(髙久舞)
四 参考文献一覧

  ブログ筆者も微力ながら委員の一人に加えていただき、調査に参加しました。大槌稲荷神社や小鎚神社、各芸能団体の関係者の方々に、貴重なご教示やご協力を賜りましたこと、また大槌町教育委員会大槌町文化遺産活性化実行委員会、大槌町郷土芸能保存団体連合会、大槌町民俗芸能調査委員の方々に、ご指導とご厚情を戴きましたことに、心より御礼申し上げます。

ビクトリアロードを散策して

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 岩手県神社庁での会議に出席のため盛岡市に宿泊し、翌朝、ビクトリアロードや盛岡城跡公園、賢治清水などを散策しました。ビクトリアロードは下の橋たもとの新渡戸緑地(新渡戸稲造生誕の地)から、盛岡城跡公園のユリノキ並木を経て、与の字橋たもとの新渡戸稲造像までの中津川右岸沿いの道路のことです。賢治清水は宮沢賢治が盛岡高等農林学校在学中に下宿していた当時使用した共同井戸です。

 新渡戸稲造宮沢賢治ゆかりの施設は、国内外各地に点在しています。世界遺産「明治日本の産業革命遺産」のように、それらを統合した文化遺産として捉えることにより、地方創生をダイナミックに推し進めるヒントが得られるのではないかと思われてなりません。

共存学ブックレット『震災復興と大槌町』

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 國學院大學研究開発推進センター共存学グループ編『共存学ブックレット 震災復興と大槌町――文化・自然・人のつながり』(國學院大學研究開発推進センター、平成28年3月10日発行)をお贈りいただきました。お心遣い誠に有難うございます。

 平成25年2月17日に行われた共存学フォーラムの記録に加え、平成27年度國學院大學二十一世紀研究教育計画委員会研究事業「地域・渋谷から発信する共存社会の構築」(研究代表=阪本是丸神道文化学部教授・研究開発推進センター長)の「共存学」グループの成果の一環として、復興状況の調査記録等を収録しています(はじめに)。

 目次は次の通りです。

巻頭写真(大槌湾より城山を望む、大槌湾遠景、盛土工事が進む小鎚川河口付近、住宅建設が進む大槌川沿い、鹿子踊、虎舞、大槌稲荷神社の神輿、小鎚神社の神輿による川渡り)

はじめに

1 「共存学」と震災復興――伝統文化・祭事の復活の意味(古沢広祐)

2 地域社会の共存と神社・芸能――岩手県上閉伊郡大槌町の事例(茂木栄)

3 平成二十四年度共存学フォーラム「震災復興と文化・自然・人のつながり――岩手三陸・大槌の取り組みから」

  • 基調講演一「震災復興に伝統文化の力をどう活かすか?――郷土芸能と人々の暮らし」(小島美子)
  • 基調講演二「『逆境に立ち向かう』――震災からの復興に自然と歴史と文化を」(佐々木健
  • 個別報告一「避難所の口伝とともに」(十王舘勲)
  • 個別報告二「後方支援者としての神社・神職」(佐藤一伯)
  • 個別報告三「つくる、つながる、つどう――明日への一歩、希望の針」(吉田律子)
  • 個別報告四「地域の自立を支える中間支援とは?」(小野仁志)
  • コメント「支援する側・受ける側の境界を超えるとは」(板井正斉)
  • 全体討論(司会=黒崎浩行、古沢広祐)

4 震災復興と大槌町――文化・自然・人のつながり(杉内寛幸) 

  岩手・宮城・福島三県のなかで、岩手県は首都圏から最も遠くにあります。地理的に調査が困難な岩手県三陸沿岸の被災地を敢えて選定し、継続的に足を運んで調査や交流を重ね、このような成果を刊行されましたことに、感謝を申し上げます。

『昭和前期の神道と社会』

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 阪本是丸先生より、國學院大學研究開発推進センター編(責任編集・阪本是丸)『昭和前期の神道と社会』(弘文堂、平成28年2月29日発行)を御恵投いただきました。お心遣いに衷心より感謝申し上げます。

 平成24年度からの共同研究の成果論集であり、目次は次の通りです。

  • 序(阪本是丸)

第一部

  • 照本亶と『皇国』――大正期・昭和初期の神社人の言説(藤本頼生)
  • 昭和前期における河野省三の時代認識と神道学構想(髙野裕基)
  • 今泉定助の思想と皇道発揚運動(武田幸也)
  • 葦津珍彦小論――昭和初期における一神道青年の軌跡(藤田大誠)
  • 天野辰夫の天皇観・神道観について(東郷茂彦)
  • 星野輝興・弘一の神道学説をめぐって(神杉靖嗣)
  • 波田春夫の国体論――戦時経済論と記紀神話解釈(菅浩二)
  • 藤澤親雄の国体論――戦前期を中心に(上西亘)
  • 大串兎代夫の帝国憲法第三十一条解釈と御稜威論(宮本誉士)
  • 武田祐吉の学問態度と〈万葉精神〉(渡邉卓)
  • 萩原龍夫と国民精神文化研究所・教学錬成所(大東敬明)
  • 真宗僧侶伊藤義賢の神道論(戸浪裕之)
  • 神道神学者・小野祖教の誕生(赤澤史朗)

第二部

  • 神社行政における「国家ノ宗祀」(河村忠伸)
  • 埼玉県神職会と氏子崇敬者総代会について(半田竜介)
  • 戦中期における皇典講究所祭祀審議会の活動(齊藤智朗)
  • 戦時期村役場文書にみる無格社整理――新潟県矢代村・上郷村を事例に(畔上直樹)
  • 二・二六事件と「八紘一宇」――道義性と政治性の分岐点(黒岩昭彦)
  • 海外における日本神話研究――ファシズム期の視点から(平藤喜久子)
  • 戦時期の国語世界化と国学(川島啓介)
  • 軍学校における校内神社の創建とその役割(坂井久能)
  • 陸軍における戦場慰霊と「英霊」観(中山郁)
  • 国家神道」と特別高等警察(小島伸之)
  • あとがき(宮本誉士)
  • 年表
  • 人名索引

 阪本先生の総論「昭和前期の『神道と社会』に関する素描」は、『古事記』や『日本書紀』、歴代天皇詔勅に基づく「惟神の大道」「天壌無窮」などの神道的用語が、戦前期の日本社会において自由闊達に議論されていた様子について、詳しく論じています。

 東北の神職に対する激励の御手紙をも頂戴し、感激致しますとともに、貴重な論文集を大いに勉強に活用させていただき、御恩に報いたいと思います。

昭和前期の神道と社会

昭和前期の神道と社会

 

 


 

 

 

「日本儒林叢書全文データベース」(Jurin DB)と「日本思想史文献データベース」(DoJIH)

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 「日本儒林叢書全文データベース」制作委員会・「日本思想史文献データベース」制作委員会の桐原健真委員長(金城学院大学准教授)より、両事業の進捗状況についての報告を書面にて頂戴しました。お心遣い誠に有難うございます。

 「日本儒林叢書全文データベース」は、近世日本の儒学・漢学著作を集成した、関儀一郎編『日本儒林叢書』(1927~1938)をデータベース化し、日本研究や日本文化に関心のある全世界の人々へと発信するものです。
 「日本思想史文献データベース」は、1968年以降の日本思想史関係の論文・著作の目録をデータベース化したもので、英語・中国語・ドイツ語・韓国語・インドネシア語などの多言語による検索も可能です。
 桐原先生とは日本学研究会(藤原暹代表=当時)の第1回研究会(平成16年5月22日、茨城大学)でお目にかかって以来、ご無沙汰しておりますが、ご縁を絶やさず交流が続いておりますことに感謝申し上げますとともに、益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

 

日本儒林叢書全文データベース:Jurin DB

 

日本思想史文献データベース検索

 

盛岡市先人記念館「新渡戸稲造記念室」

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 岩手県神社庁の会議や研修に出席するため、2月25日(木)・26日(金)と盛岡市に滞在し、空き時間に盛岡市先人記念館を拝観しました。

 明治期以降に活躍した盛岡ゆかりの先人130人を紹介するこの施設には、新渡戸稲造記念室、米内光政記念室、金田一京助記念室、総合展示室があります。

 このうち、新渡戸稲造記念室には、生涯を『太平洋の架け橋』になろうと国際交流につくした新渡戸稲造の足跡とその業績を、「国際人として」「教育者として」「留学時代とキリスト教」「武士道の心」「私人として」「公人として」「遺品・遺墨」の7項目によって展示しています。

 今回、とくに目にとまった資料が2つありました。

 そのひとつ、明治10年(1877)8月に、母せき(勢喜)が稲造に宛てた手紙に、次の一首が詠まれています。

老松の 千代も八千代と

榮なば みどりも

さかへ 八重も八千代と

 母せきが、稲造の活躍を祈って詠んだ一首のようですが、親が子を思う心をこえて、緑豊かな郷土の発展に思いを寄せることのできる歌のように思います。

 もうひとつは、「出雲大社に詣でて」と題した次の和歌の自筆短冊です。

惟神(かんながら)道一筋に進まんと

思ふ心は神ぞ知るらん  稲造

 新渡戸稲造キリスト教徒ですが、神道に深い崇敬を寄せていたことがこの一首からもうかがうことができるように思われます。このことに興味のある方は、拙著『世界の中の神道』(錦正社、平成26年)をご覧いただければ幸いです。

 また、青森県十和田市の新渡戸記念館をはじめ、全国の新渡戸稲造ゆかりの地を紹介する地図が展示されていました。

 千田順一館長は『盛岡市先人記念館だより』55号(平成27年9月1日)の「新渡戸の『武士道』世間の武士道」において、

 昨今、「サムライ」「武士道」という言葉をメディアで多く耳にする。「サムライ○○」といったネーミングの発想には武勇の面ばかりに着目した印象を受ける。サムライにはサムライの振る舞いがあり、品性が備わっているものであることをどこかへ置き去りにしたような感じがするのである。新渡戸の『武士道』と世間の武士道との違いということになるのであろう。

と述べ、多くの人が『武士道』を手にとることを願っています。

 この提言に加え、全国各地、とくに岩手・青森など東北地方にある新渡戸稲造や新渡戸氏ゆかりの地を訪ね、武士道を培った歴史と文化を学ぶことが大切ではないかと思います。

www.mfca.jp

www.nitobe.jp

世界の中の神道 (錦正社叢書)

世界の中の神道 (錦正社叢書)