M・W・スティール「行動の『型』」

 M・W・スティール氏の「行動の『型』――西郷隆盛明治維新」(源了圓編『型と日本文化』、創文社、1992年)は、「型」を日本文化において顕著な儀礼的概念よりも広い、政治・経済・社会などのいとなみで生じる行動体系として、さらに歴史認識の道具として捉え、勝海舟との交流を契機とした西郷隆盛の「不合理な行動」を検証。西郷の「行動の型」は中国と日本の歴史的伝統から生れたもので、純粋、正義、誠実などの観念で構成され、目標は「私利私欲の全くない高潔で公正な国家の奉仕者としての自分であり、民衆の友としての自分であり、権利欲にとりつかれたエリートの敵としての自分であった」(198頁)と述べています。