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杉本章子『東京影同心』

 直木賞作家・杉本章子さんの『東京影同心』は、講談社創業100周年記念出版の書き下ろし作品です。「つかみぼくろ」、「ミルクセヰキは官軍の味」、「東京影同心」の三章構成。帯に次のようにあります。 

 御一新で「八丁堀」は変わっても、同心魂には変わりなし。
 明治になって、町奉行所は跡形もなく消え失せたが、元定回り同心・弥一郎は、男としてのケリをつけるため、今日も東京の町を駆け抜ける。
 明治元年江戸町奉行所は市政裁判所と名を変え、のち、東京府に移管されて、完全に姿を消した。
 慶応三年、二五歳で異例の出世をし、南町奉行定回り同心となった金子弥一郎。
 お役大事で、まじめに生きてきたこの男にも、コロリの流行、桜田門外の変彰義隊と、文久、慶応、明治の大変動が襲いかかる。
 「八丁堀」が消えた明治の世になって、捕り物一途の男が見せる、己れと世の中につける決着。

 御一新後の中外新聞入社や売れっ妓米八との交わりなど、波乱にとんだ弥一郎の生き様には惹きつけられるものがあります。
 著者よりこの本を恵与いただいたのは2月初めのこと。早々にブログで紹介をと思いつつ一月余りすぎた3月11日に大地震がありました。電気が復旧した15日夜、福岡からお見舞いの電話を戴いたことは忘れません。4月7日深夜の余震で再び停電になったとき、真っ暗闇の中でこの作品と激励電話のことを思い出し、また元気づけられました。
 「同心魂」を教えてくれた藤原ゼミの偉大な先輩に、あらためて感謝します。