河野省三「感激の推薦」――加藤玄智編『明治・大正・昭和 神道書籍目録』の推薦文(2)

 リーフレットには柳田國男に次いで、河野省三(1882〜1963)「感激の推薦」を掲げています。ここではその後半部分を紹介します。

 明治、大正から昭和の初年にかけての日本は、神道思想にとつても、固有文化にとつても、起伏多く意義深い時代であつて、此の間に於ける神道関係の著述は、刊本、写本共に意外に多い。而して明治前期に於ける種々の著書には、当時に於ける日本社会の側面を明らかにし、将来に於ける神社神道の在り方を考へるよりも少なからぬ重要性を有してゐる。而もその調査や研究には可なりの不便が伏在してゐる。本書がそれらに対して寄与する功績は案外に多いことを期待するに十分である。
 自主性と特殊性とにも重点を置くべき、今後の内外学徒の日本文化研究にとつて、全く感謝に堪へない読書界、出版界の福音である。私は本書を弘く各方面の知識人、文化機関にお勧めする。

 なお、リーフレットには本書籍目録出版に至る経緯を紹介しています。河野氏の推薦文の前半部分と重なる内容ですので、参考までに掲げたいと思います。

 曩に明治聖徳記念学会が加藤玄智博士を中心に多年辛苦の結果「神道書籍目録」壱巻を上梓頒布致しました。内容は上古以降明治以前に亘る神道関係の文献一切を細大漏らさず収録したもので、特に宗教歴史学会に裨益する所甚大なりとして江湖に歓迎され忽ち版を重ねた次第であります。爾来、明治初年より現代に至る続編の要望随所に起り、同学会は之に応え相次いで鋭意編纂に従事して参りましたが、今回その刊行事業の一切を当明治神宮に於て継続施行致すことになりました。本書の意義深厚遠大なるに思ひを馳せつつ傾倒努力して漸く体裁を整へるに到りました。必ずや同学篤志の方々の要望に叶ふものと確信して居りますので、皆様の机辺の好伴侶として是非壱本お備への程、以上刊行経過の一端を紹介旁々お願ひ申上げます。