住家正芳「ナショナリズムはなぜ宗教を必要とするのか」と佐藤一伯「明治期イギリス人の神道論に関する一考察」



 
 住家正芳氏の論文「ナショナリズムはなぜ宗教を必要とするのか――加藤玄智と梁啓超における社会進化論」(『宗教研究』第376号、2013年6月、1〜25頁)を拝読し、加藤玄智、ハーバート・スペンサーといった人物に言及している点が、拙稿「明治期イギリス人の神道論に関する一考察――W・G・アストン『神道』につて」(『國學院大學研究開発推進センター研究紀要』第7号、平成25年3月、117〜138頁)と共通しているこことに興味を抱きました。
 住家氏はこの論文で国家神道概念の淵源とされる加藤玄智の宗教論に社会進化論的な問題意識があり、同様の論理が近代化・西洋化に直面した中国の梁啓超の宗教理解にも見出されることを確認しています。他方、拙稿ではイギリスの外交官で日本学者のウィリアム・ジョージ・アストンが著した『神道』(1905年)における、スペンサーの社会学の参照をはじめ古代の「国家的神道(the State Shinto religion)」という用例などが、加藤玄智やその後の神道理解に与えた影響について指摘しています。
 このような比較文化や国際交流の研究成果に触れて、今後、近代の神道・日本文化を理解する上で、従来の政治的・社会科学的な視点のみではなく、文学的・人文科学的な考察が重要となるように思われます。