吉田満『ジンジョコの謎――肩車方言考』

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吉田満『ジンジョコの謎――肩車方言考』

 岩手民俗の会会員の吉田満先生より、『ジンジョコの謎――肩車方言考』(盛岡・熊谷印刷出版部、2020年4月10日発行、A4判、188頁)をご恵与いただきました。ご出版をお祝い申し上げますとともに、お心遣いに感謝申し上げます。

 本書の目次は次の通りです。

  • はじめに
  • 第一部 〈ジンジョコ〉を巡って
  • Ⅰ 九戸方言地図
  • Ⅱ 〈ジンジョ〉系方言の概要
  • Ⅲ 全国の〝肩車〟の方言分布
  • Ⅳ 〈ジンジョコ〉の語源について
  • Ⅴ 〈ジンジョコ〉〝人形〟の正体は?
  • Ⅵ 〈ジンジョコ〉と個別・具体的人形との関係
  • 第二部 〈ジンジョコ〉の成り立ち
  • Ⅶ 〈ジンジョコ〉と「人形おくり」
  • Ⅷ 〈ジンジョコ〉と「オシラサマ」
  • Ⅸ 北海道の謎
  • Ⅹ まとめ
  • 詳細図
  • おわりに

 本書によると、「ジンジョコ」は主に青森県東部と岩手県北部沿岸で話されている「肩車」を意味する方言で、「人形おくり」すなわち「疫病おくり」「虫おくり」、さらには「オシラサマ」という、「北東北の風土を色濃く反映した祭り・行事と深く結びついていた」と指摘しています。

『近代の神道と社会』

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 國學院大學研究開発推進センター編(責任編集・阪本是丸)『近代の神道と社会』(弘文堂、令和2年2月15日発行)をご恵与いただきました。

 目次は次の通りです。

  • 序(阪本是丸)
  • 近代の「神道と社会」を用意したもの――明治大嘗祭への道程(武田秀章)
  • 神武創業の精神と垂加神道――君臣合体守中之道(西岡和彦)
  • 大国隆正と福羽美静の国学――「本学」をめぐって(中村聡
  • 神武創業と国家祭祀形成(高原光啓)
  • 明治前期の神職とその活動――埼玉県の事例から(小林威朗)
  • 平田派国事犯事件について――丸山作楽を中心に(半田竜介)
  • 島地黙雷の政教論――「政教相依」論の展開と「布教」(戸浪裕之)
  • 扶桑教会宍野半と神道事務局直轄教会(永田昌志)
  • 御嶽教の変容と神道家――鴻雪爪と神宮暠寿による教団「神道化」をめぐって(中山郁)
  • 海老名弾正と黒住教――近代の神道キリスト教の接点(佐々木聖使)
  • 賀茂真淵の墓改修事業とその歴史的意義(坂井久能)
  • 池辺義象の日本法制史研究と祭政一致論(齋藤公太)
  • 近代神社祭祀と祭服――幣帛供進使服制の制定過程を中心に(星野光樹)
  • 大祓詞」変遷の軌跡と近代神道の社会対応(東郷茂彦)
  • 官幣大社霧島神宮列格の背景と経緯及び待遇向上運動(宮本誉士)
  • 神道人」から見る近代神道史――官幣大社浅間神社宮司時代における高山昇の活動・事績を中心に(齊藤智朗)
  • 神社と教育勅語――国民道徳を媒介とした関係について(高野裕基)
  • 大正期神社行政と神社「森厳」問題――内務官僚佐上信一の鳥取県庁時代に注目して(畔上直樹)
  • 高木兼寛の「神道観」――神道的「八紘一宇」の導線(黒岩昭彦)
  • 「大日本世界教稜威会」川面凡児の神道思想――今泉定助との比較を通じて(神杉靖嗣)
  • 山口鋭之助の祭政一致構想と神社界――大国隆正を回路として(上西亘)
  • 神宮大麻と家庭祭祀の思想――明治天皇の思召について(佐藤一伯)
  • 近代の大嘗祭論と天皇象(武田幸也)
  • 星野輝興の祭祀学――神嘗祭新嘗祭とをめぐって(中野裕三)
  • D・C・ホルトムの日本研究とその時代―― State Shinto 措定の目的を探る(菅浩二)
  • 植木直一郎の「古典研究」と皇典講究所國學院(渡邉卓)
  • 国家神道憲兵隊――日本救世軍弾圧をめぐって(小島伸之)
  • 昭和戦中期の国学研究――藤田徳太郎を例に(松本久史)
  • 戦時下における英霊公葬運動と神仏抗争――日本主義の哲学者・松永材の神仏観を軸として(藤田大誠)
  • 近代神社法制度と神社本庁(河村忠伸)
  • 折口信夫の自己定位――矢野玄道歌への言及から(上野誠
  • あとがき(宮本誉士)

 阪本是丸先生は序において、「本書は、令和二年三月に定年を迎える筆者が國學院大學研究開発推進センター長として編集する最後の論集となる。・・・・・・本書を契機として、今後活躍する研究者達が当該テーマを具体的かつ実証的にさらに深く検討されることを心より祈念して筆を擱くこととする」と述べています。

近代の神道と社会

近代の神道と社会

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 弘文堂
  • 発売日: 2020/02/12
  • メディア: 単行本
 

齊藤壽胤『思索する経世学者佐藤信淵』

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 齊藤壽胤先生より『思索する経世学者佐藤信淵』(彌高叢書第十三輯、彌高神社・平田篤胤佐藤信淵研究所、令和元年6月15日発行)、及び「おみやげの話」(『楽園』53号、令和元年6月1日発行)、「杓子の秘密」(『楽園』55号、令和元年10月1日発行)をお贈りいただきました。お心遣いに感謝申し上げます。

 『思索する経世学者佐藤信淵』は、「思索する経世学者佐藤信淵」、「佐藤信淵国学者か―国学を試論する」、「西洋発見と佐藤信淵の学問とにおいて」、「子供の命と将来―佐藤信淵の子供観から」、「佐藤信淵の「山相学」を読み解く」の五章からなります。

 

丹治正博・福島県神社庁長の講話

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福島県神社庁・丹治庁長の講話(於福島稲荷神社社務所

  明治神宮旧職員の東北代々木会が26日、来賓に明治神宮の九條権宮司を迎え福島県で開催され、正式参拝に先立ち、福島稲荷神社の丹治正博宮司福島県神社庁長)より、東日本大震災復興支援活動について講話をいただきました。

 平成24年2月の双葉郡浪江町の苕野神社での復興祈願祭について映像をもとに解説。さらに福島県復興祈念公園の基本計画に、ふるさとと人々を結ぶ場、民俗芸能等の伝統行事継承の場の趣旨が盛り込まれ、近接する合祭殿建設の機運が高まっていると報告がありました。

 風評被害の払拭も課題だと強調していました。

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一関市博物館企画展「木造観音菩薩坐像とその周辺」

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木造観音菩薩坐像(国指定重要文化財、東川院蔵)

 一関市博物館第26回企画展、国指定重要文化財・東川院蔵「木造観音菩薩坐像とその周辺」(令和元年7月20日~9月23日)を拝観してきました。

 一関市大東町渋民の東川院が所蔵する木造観音菩薩像は、奥州藤原氏による寺院造営に携わった仏師によって制作されたと推定され、平成30年10月に国の重要文化財に指定されました。それを記念して東川院の歴史や什宝、同時期の市内の仏像などが紹介されています。

 東川院の近隣には、芦東山記念館や一関市民俗資料館などがありますので、この機会にあわせて足を運んでみてはいかがでしょうか。

www.city.ichinoseki.iwate.jp

橋内武「強制隔離政策下の療養所生活」

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橋内武「強制隔離政策下の療養所生活―長島2園を中心に」

 橋内武先生と今夕、一関市内の梅茂登で鰻定食を食べながら懇談しました。

 橋内先生は今回、東北地方の二つのハンセン病療養所の調査にお越しになり、その道中に一関に立ち寄られ、中尊寺毛越寺猊鼻渓にも足を運ばれたそうです。

 4月に論文「強制隔離政策下の療養所生活―長島2園を中心に」(『桃山学院大学総合研究所紀要』第44巻第3号、2019年3月)の抜刷をご恵与いただいており、お目にかかるにあたり改めて拝読しました。「ハンセン病とは何か」という基本的な問いに始まり、「らい予防法」「強制隔離政策」「ハンセン病療養所」の歴史的な流れをたどり、入所者の暮らしを多角的に活写しています。この論文を頂戴した際、神道におけるハンセン病への取り組みについての質問を先生よりいただいたのですが、いまだ十分な調査に至っておらず、遺憾に感じています。

 懇談中、平泉の世界遺産の拡張登録に関する当地の取り組みが話題となりました。その際、橋内先生より岡山の日本遺産の事例(「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま)についてご教示いただきました。日本遺産ポータルサイトによると、「文化庁では、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」として認定し、ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の様々な文化財群を総合的に活用する取組を支援」しているとのことです。

 また、橋内先生にとっては岡山ノートルダム清心女子大学時代の先輩教員で、小生にとっては岩手大学時代の恩師であった藤原暹先生(平成21年7月逝去)の思い出話をさせていただき、懐かしい気持ちになりました。

stars.repo.nii.ac.jp

japan-heritage.bunka.go.jp

tabelog.com

 

過疎地における今後の神社の在り方を問う

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 「奉祝 天皇陛下御即位 第三十六回東北六県神社庁関係者連絡協議会」(主催・東北六県神社庁、当番・岩手県神社庁)が6月26日(水)午後0時30分より、ホテルメトロポリタン盛岡ニューウィングで開催され、東北六県の神社庁長・副庁長・理事など約120名が参加しました。

 主題は「過疎地における今後の神社の在り方を問う」で、過去3年にわたり協議会で行われてきた、過疎地が抱える問題に関する議論を踏まえて対応策が検討されました。

 広島・杉森神社宮司の岡田光統氏による基調講演では、神職の「自力」「内発的動機」の大切さを指摘し、神社における公的祭祀や清掃の厳修、勉強と情報発信、森の番人・信仰者として生きることなど、ご自身の実践事例を中心に報告されました。

 パネルディスカッション(コーディネーター:皇學館大学准教授・板井正斉氏)では、宮城県神社庁教化部長の高橋鉄夫氏が、アンケートに基づき後継者(神職)を育てる研修事業に力を入れていることを述べ、福島県神社庁教化部長の山名隆史氏は、有村治子参議院議員の協力を得て被災神社の合祭殿の創建に力を注いできたことを報告しました。青森県神社庁教化委員長の林亨氏は神社祭祀の振興について、山形県神社庁教化委員長の一戸芳樹氏は人口減少集落の地域振興策について報告、秋田県神社庁教化委員長の佐々木宮廣氏は神社祭祀のDVD作成やラジオ番組「神社で願いを」の取り組みを紹介しました。岩手県神社庁教化委員長の坂本広行氏は不活動神社の解消や巡回研修に取り組んできたことを報告しました。

 休憩をはさんでフロアから質問がいくつか出され、その中で小生は、過疎化を前提とした神職の研修や神社振興の対策だけでなく、人口減少(少子高齢化)を少しでも食い止める対策として、先祖や家族の大切さを啓発する取り組み、例えば、家族を尊重し保護する規定を憲法に明記するように主張する(憲法改正)運動などが必要ではないか、と指摘しました。今回の講演や議論を拝聴して、東北地方や全国の神職・神社の内発的努力は健気で素晴らしいものと評価すべき面が多く、それをさらに推し進めるという視点に加え、社会の改善を促すようなダイナミックな対策が必要ではないかとの思いに駆られたのでした。この質問に対しては、神社本庁教化広報部長の牛尾淳氏より、家庭祭祀の振興という視点からのご意見をいただきました。

 また、懇親会の席上で、「教員のなり手が少なくなっており、教職を担う神職がもっと増えるべきではないか」、「地域の雇用を増やす努力をすべきではないか」など、若手の神職の方々よりご意見を頂戴しました。こうした交流ができたことは、小生の質問を採り上げていただいたコーディネーターの板井先生のお蔭と感謝いたします。

 講師の岡田宮司とは、平成14年(2002)の神道国際友好会の欧州研修の際、全行程で相部屋でお世話になり、二次会の際に思い出話ができました。