2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

W. G. アストン『神道』について(19)

第十四章「神道の衰頽、近世の諸流派」では「仏教の興隆」について「後世の神道は衰頽の歴史である。尤も神道に生気の絶えざるゆゑんは第一神道に接木した仏教の力である。支那の道徳、哲学の影響、特に近世に至っての影響が更に著しい。」(『日本神道論』…

W. G. アストン『神道』について(18)

第十三章「禁厭・卜占・霊感」では「まじなひ」について、「日本の辞書学者山田美妙は、まじなひは「神仏のすぐれた力の加護によつて、災難を除くこと」と言つて居るが、チツメルンの説と実質に於て一致して居る。…… Sir Alfred Lyall 及び I. G. Frazer は…

W. G. アストン『神道』について(17)

第十二章では、「儀式といふものは前二章で述べた崇拝の要素が或目的のために結合したものである。『延喜式』は、次に掲げる神道の或重大なる儀式に関する主要な典拠である。余は又此処で、Sir E. Satow 氏が亜細亜協会第七巻及び第九巻に発表せられた研究を…

W. G. アストン『神道』について(16)

第十一章では、神道の「道徳」について「道徳律の性質を備へたものは幾んど無い。……神道の聖書には直接に道徳を教へて居ない。毎年両度に行はれる大祓の祝詞の中にある罪名の中には、いはゆる十戒中の一戒をも含んでゐない。」(『日本神道論』、三〇二頁)…

W. G. アストン『神道』について(15)

第十章「崇拝〔Worship〕」では、「宗教的行為は、崇拝、宗教的制裁を有して居る限りについていふ道徳、儀式的清浄の三つを含む。」として、そのうちの「崇拝」ついて触れています。 「崇拝」という語は「人に対する尊敬礼譲と神に対する崇拝とに適用」し、…

W. G. アストン『神道』について(14)

第九章では、「神道はハーバート・スペンサーの言つた下の原理を説明してゐる。それは「社会進化の初の段階に於ては、人事と神事とに幾んど区別が無い」といふことである。天皇は最高の祭官でもあり、同時に帝王でもあつた。人事と宗教的儀式との間に明かな…

W. G. アストン『神道』について(13)

第八章では「人間神」を「個人を神として祀ること」(タケミナカタノ神、八幡、天満宮)、「団体の神」(日の女神補佐の神、中臣家の祖兒屋命、太玉、ウズメ、石凝姥命、豊玉、事代主、少彦名)、「人間的性質を抽象してこしらへた神」(塞の神、鬼、幸運の…

W. G. アストン『神道』について(12)

第七章「多神論――自然神」〔The Pantheon ― Nature Deities〕では、「日の女神」〔The Sun-Goddess〕が「神道中最も尊い神」であり、なぜなら、 太古の日本人は甚だ不十分な又きれぎれな風俗の中に、且つ彼等が直接に影響を受けつつある物理的現象の中に、殆…

W. G. アストン『神道』について(11)

第六章では「日本の神話」について、「日本の古い神話の観念を十分得るには、記事が固より重複、矛盾、曖昧なことを含んではゐるが、記紀旧事記の直接研究を外にしては決して得られないのである。」(『日本神道論』、一一一頁)と述べた上で、「日本の混沌…

W. G. アストン『神道』について(10)

第五章「神話」では、宗教的神話を研究する意義について、「神話は比喩から発達したものであるが、その比喩の如く、真実でないものによつて真実を暗示するものであつて、宗教的教育に必要なものであることは既に承認せられて居る。言語の幼稚な時代には、霊…

W. G. アストン『神道』について(9)

第四章「総論――神の職分〔functions〕」では、神道の神への祈りについて次のように観察しています。 自然神は其の固有の自然の職分にのみ拘はつてをることが稀である。神道では神が人間を保護する傾向がますます生じて来ることを示してをる。古神道の中にさ…

W. G. アストン『神道』について(8)

第三章「総論――人を神にすること」では、「人間を神にすることが神道に於て重要な事であることは、西洋の学者からも、近世の日本人からも誇大に説かれた。……実際神道は宗教的思想の二大潮流の中、第一の方〔自然崇拝〕よりも、第二の方〔人間崇拝〕から発し…

W. G. アストン『神道』について(7)

第二章「総論――擬人法」では、「宗教」「宗教の一要素たる情操」「宗教の智的根拠、神の観念」、「神」、「宗教的思想の二重の流れ」、「神の分類」、「概念上の形式」、「霊魂説」、「団体の神と性質の神」の各項を説明し、次のように述べています。 日本語…

W. G. アストン『神道』について(6)

第一章「神道の研究に必要な材料」では、「先史時代の神道」「古事記」「日本紀」「旧事紀」「出雲風土記」「古語拾遺」「姓氏録」「延喜式」「本居と平田」の各項(小見出し)を設けて解説の後、次のように述べています。 以上述べた書物は古神道の研究にか…

W. G. アストン『神道』について(5)

ウィリアム・ジョージ・アストンは『神道』(1905年)の「序文」において、 私の此の論文には二個の目的がある。即ち宗教の科学的研究用として、神道の最も重要な事件の索引を作ると同時に、宗教の一形式と宗教の初歩とを特に神道について陳べようとするので…

W. G. アストン『神道』について(4)

『日本神道論』の大正11年2月11日付「訳者の序」(序言)は、「此の「神道論」は西欧はいふに及ばず、我が学者の間に於ても既にクラシツクになつてゐる。」として、その特色を次のように述べています。 氏の神道に関する見解は、決して我等日本人が考へるや…

W. G. アストン『神道』について(3)

『日本神道論』の巻頭にはアストンの肖像の図版、訳者の一人・芝野六助宛の手紙(1908年〔明治41〕6月26日)の図版と訳文、翻訳神道にアストンが寄せた序文(1909年〔明治42〕2月1日)の図版と訳文が掲載されています。 芝野宛「原著者からの手紙」でアスト…

W. G. アストン『神道』について(2)

W.G.アストン『神道』(1905年)の日本語訳は、戦前(大正11年)と戦後(昭和63年)に、それぞれ別の訳者によって行われています。 そのうち、ダブルユー・ジー・アストン原著、補永茂助・芝野六助訳『日本神道論』(明治書院、大正11年6月15日発行)を紹介…

W. G. アストン『神道』について(1)

W.G.アストンの神道研究の代表作『神道』(1905年)について、加藤玄智らが編んだ欧文神道書籍目録には、「Shinto, or the Way of the Gods. London, 1905.」と掲載しています。 架蔵本(Shinto, (the Way of the Gods), by W.G. Aston, London; Longmans, G…

A bibliography of Shinto in Western languages (加藤玄智ほか編『欧文神道書籍目録』)

昭和28年には加藤玄智編『明治・大正・昭和 神道書籍目録』と同時に、欧文書籍の目録 A bibliography of Shinto in Western languages, from the oldest times till 1952 (compiled by Genchi Kato, Karl Reitz and Wilhelm Schiffer, Tokyo: Meiji Jingu Sh…

東日本大震災復興祈念特別展「神々への祈り」―神の若がえりとこころの再生―

標題の企画展が4月28日(土)から6月17日(日)まで、宮城県多賀城市の東北歴史博物館で開催されます。 伊勢神宮、賀茂御祖神社(下鴨神社)、出雲大社、鹽竈神社の歴史と人々の結びつきをたどり、神々への信仰がいかにして継続し、人々の精神や社会の再生が…

『神社と御神木・社叢――「神社信仰と御神木に関する調査」報告』

平成22年度より神社本庁と國學院大學研究開発推進機構とが共同で実施した「神社祭祀と御神木に関する調査」の報告書『神社と御神木・社叢』(笹生衛監修、加瀬直弥編集、渡邊典博写真、神社本庁他協力、國學院大學神道資料館・平成24年2月29日発行、B5判、12…

「古事記編纂1300年記念」事業の情報満載――本居宣長記念館会報「ふみの森探検隊 通信」第3号

公益財団法人鈴屋遺蹟保存会 本居宣長記念館(吉田悦之館長)より『ふみの森探検隊通信』第3号(2012年4月1日発行)を御恵与戴きました。誠に有難うございました。 今年は「古事記編纂1300年記念」として数々の事業を計画しており、展示イベントや本居宣長に…

長井眞琴「関係者の一人として」――加藤玄智編『明治・大正・昭和 神道書籍目録』の推薦文(3)

最後に、長井眞琴(1881〜1970)の推薦文「関係者の一人として」の後半部分を紹介します。 ややもして、神道を極限して解釈し勝ちであるが、そんな狭いものではなく、正に神ながらおのづからに生れ出た国の宗教とも言ふべきものであらうと思ふ。本書もその様…

河野省三「感激の推薦」――加藤玄智編『明治・大正・昭和 神道書籍目録』の推薦文(2)

リーフレットには柳田國男に次いで、河野省三(1882〜1963)「感激の推薦」を掲げています。ここではその後半部分を紹介します。 明治、大正から昭和の初年にかけての日本は、神道思想にとつても、固有文化にとつても、起伏多く意義深い時代であつて、此の間…

柳田國男「推称の辞」――加藤玄智編『明治・大正・昭和 神道書籍目録』の推薦文(1)

加藤玄智(1873〜1965)編『明治・大正・昭和 神道書籍目録』(明治神宮社務所、昭和28年11月3日発行、B5判函入上製本、本文707頁)には、拙著『明治聖徳論の研究――明治神宮の神学』(国書刊行会、平成22年)において、明治天皇・昭憲皇太后に関する書籍の…

楠家重敏『W.G.アストン――日本と朝鮮を結ぶ学者外交官』

イギリスの外交官であり日本学者のウィリアム・ジョージ・アストン(1841〜1911)は、アーネスト・サトウ、バジル・ホール・チェンバレンとともに、明治時代のイギリス人三大日本学者に挙げられます。北アイルランドで生まれ、クイーンズ大学卒業後に日本の…

古事記編纂1300年記念 公開講演会・企画展

鈴屋学会事務局(本居宣長記念館内)より、第29回鈴屋学会大会の案内等を受領しました。 第29回鈴屋学会大会公開講演会(4月21日〔土〕午後2時、松阪市産業振興センター3階、聴講無料)の講師は毛利正守氏(皇學館大学教授・大阪市立大学名誉教授)、演題は…

田口祐子「現代における安産祈願の実態とその背景」

田口祐子氏の論文「現代における安産祈願の実態とその背景」(『神道宗教』第220・221号、神道宗教学会、平成23年1月、107〜129頁)を興味深く読みました。 東京都内の神社へのインタビューと、メディア(育児雑誌やインターネットの育児サイト)の分析をもと…