W. G. アストン『神道』について(11)


 第六章では「日本の神話」について、「日本の古い神話の観念を十分得るには、記事が固より重複、矛盾、曖昧なことを含んではゐるが、記紀旧事記の直接研究を外にしては決して得られないのである。」(『日本神道論』、一一一頁)と述べた上で、「日本の混沌の中から神が生れたといふ話」に次いで「神世七代と呼ばれる時代」に触れ、「これらの神の多くは、農業国民に大に必要なる、発生といふことについての神秘的な順序について注意して居ることを示すのである。」(一一四頁)と述べています。
 さらに、「第七代の神は伊佐那岐命、伊佐那美命の二神である。日本の神話は実はこの二神からはじまるのである。」(一一四〜一一五頁)といい、また「天の岩戸神話」について「此の物語は、日本神話中最も重要な部分である。これは、光明と暗黒との神話に属するもので歴代の朝廷にて行はれる神道の或る主要な儀式の始だといはれる。」(一三二頁)と指摘、さらに須佐之男命、大名持命、邇々杵命、経津主神武甕槌神火須勢理命火火出見命、神武天皇の諸伝承を丁寧に説明しています。