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藤原暹著『江戸時代における「科学的自然観」の研究』(1)

   
    藤原暹著『江戸時代における「科学的自然観」の研究』
                                   佐藤一伯 
 藤原暹著『江戸時代における「科学的自然観」の研究』(東京・富士短期大学出版部、昭和41年12月10日発行、四六判並製本、128頁)については、昨年(平成22年)の「日本学の集い」や『日本学研究』追悼記念号の発行等を通じて、橋内武先生や中村安宏先生より、藤原先生の初期の注目すべき業績としてご教示がありました。
 筆者もかねて関心を寄せて参りましたが、今年3月1日に東北大学附属図書館本館所蔵(矢島文庫)本を閲覧、さらに3月20日に東京都青梅市の古書店・悠山社書店に購入注文し、3月25日に落手することができました。
 この間、3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し、東北大学附属図書館本館は休館中です。
 未曾有の大震災にあたり衷心よりお見舞い申し上げますとともに、閲覧および入手のご高配に感謝し、本書の内容についてブログ上で紹介させていただきます。    

 私が江戸時代の蘭学史・科学史に興味を覚えたのは大学の学部三年の春であった。今年で丁度十年になる。
 何故にこうした分野に誘われたのか覚えていない。原爆の被爆のため死亡した父が、理論物理学を研究していた事や、兄弟が皆そろって理科に進学した事が、歴史学を専攻した私をしてこうした分野に目を向けさせたのかもしれない。(はしがき、1頁)  

 藤原先生はこのように、昭和41年10月に記した「はしがき」の冒頭で蘭学史・科学史に関心を抱いた経緯を振り返っています。昭和33年3月に東北大学文学部を卒業、広島電波工業高等学校教諭、修道学園教諭を経て、昭和39年4月に東北大学文学部日本思想史研究室助手となり、翌年4月同大学院文学研究科日本思想史専攻修士課程に入学していますので、本書の出版は修士課程在学中であったようです。「はしがき」ではさらに、この論文集は以下の口頭発表や雑誌論文を改稿したものが中心であると述べています。 

 「司馬江漢の水火二元論」第17回日本文芸研究大会発表
 「片山松斎の研究」第12回日本科学史学会年会発表
 「江戸時代における天経或問の研究」第13回日本科学史学会年会発表
 「司馬江漢の実用主義虚無主義」第3回日本思想史研究大会発表
 「片山松斎研究序説」『科学史研究』76号
 「志筑忠雄と鶴峯戊申」日本科学史学会東北支部懇話会発表
 「司馬江漢の研究」『東北大学日本思想史研究室紀要』1号

 本書の目次は次の通りです。   

   目 次
  はしがき
  序 章 問題の設定と方法(6)
  第一章 天主教系天文学書『天経或問』とその受容(12)
   第一節 『天経或問』の記述内容・性格(14)
   第二節 『天経或問』の受容過程(24)
  第二章 西洋天文学説(地動説)の受容と「科学的自然観」の形成と性格(35)
   第一節 本木良永の西洋天文学訳述と「科学的自然観」の関係(36)
     一、司馬江漢の自然観の形成と性格(36)
     二、片山松斎の自然観の形成と性格(48)
   第二節 志筑忠雄の西洋天文学訳述と「科学的自然観」の関係(61)
     一、山片蟠桃の自然観の形成と性格(61)
     二、鶴峯戊申の自然観の形成と性格(77)
    附節、戸田通元の自然観(95)
  第三章 江戸時代における「科学的自然観」の思想的意義(109)
  終 章 (123)

 序章では、研究対象である「江戸時代における自然科学の発達、就中蘭学の影響によって従来の儒学的(主として朱子学)仏教的、神道的自然観・世界観に対して新しい自然科学知識を導入した「科学的自然観」」(6頁)について、「江戸時代において最も広く読まれ物理的自然認識の方法を与えたと言われる(筑摩・『近代日本思想史講座』7「日本の思想と科学」)『天経或問』の受容史」を通じて、「上下の軸〔書誌学的、文献学的方法〕と左右の軸〔蘭学学習者の自然認識の思想発展的位置と志向性の考察〕に従い「科学的自然観」の形成と性格、更に思想史上における位置を考察するのが本論の主旨である。」(10頁)と述べています。