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地域づくりの新しい課題と人材育成――地域の発想で“異次元の地方創生政策”を

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 月刊『地域づくり』第308号(地域活性化センター、平成27年2月1日発行)の「地域づくりの人材育成」特集に掲載された、岡﨑昌之氏(法政大学教授、地域経営論)の基調論文「地域づくりを担う新しい人材育成」を興味深く読みました。

 現在の地域社会の課題は、ハードなコミュニティ整備では解決できない身近な日常生活レベルで多発しているとし、その課題群を次のように2つの側面に分けて示しています。

【地域社会に蓄積する課題群】

 高齢化や人口減少などによるひずみがもたらした喫緊の課題群。

 高齢者の介護・生活支援、団塊世代の高齢化による大量の要支援者の出現、子育て支援などの福祉分野、産科・小児科の不足などの医療分野、いじめ・ひきこもりなどの教育問題、若者世代の雇用問題、農山村の鳥獣被害、ごみの不法投棄、里山保全などの環境問題、地域社会の安全性など。

 

【将来社会形成型課題群】

 将来の魅力ある地域社会を形成するために取り組むべき地域づくり課題群。

 地域間交流やツーリズムの対象や価値となる、歴史と文化を維持してきた日本の集落や地域の継承や保全。とくに農村漁村の自然景観、生活文化の技(スキル)、祭事等での郷土食、神楽や民謡、棚田、水田への水の管理、治山治水など。 

 岡﨑氏はさらに、後者の「将来社会形成型課題群」について、「このような生活の技は、地域がもつ重要な価値であり、環境教育、郷土教育の視点からも将来に継承されなければならない。……共有できる価値意識の創出、参加と協働をとおして、はじめて美しい町、豊かな暮らしが構築され、それに立脚した活力ある地域が形成できる。そこには新しい人材が集い、新産業創出の可能性もうまれる。」と述べています。

 その上で、地域課題解決のための人材として、自治体職員には地域課題に対応できる専門性やネットワーク、情報収集発信、現場に対応する臨床性が必要であり、住民もまた「日常から、地域に真摯に向き合い、住民として地域に責任を持つことが欠かせない。また自己主張だけでなく、地域と折り合いをなし、地域を相対的に見つめることのできる自律性を備えなければならない。」と指摘しています。

 本稿に一貫する、「地域の伝統や歴史に根付いた発想」すなわち「自らの集落や地域を十分把握することからしか地域課題の発掘はできない。」との提唱は、これからの地域づくりを考える上で示唆に富んでいます。

 なお、注で紹介している岡﨑昌之編『地域は消えない――コミュニティ再生の現場から』(日本経済評論社、2014年)所収の、同氏による第一章「まちづくり論・コミュニティ形成論の経緯」には、「過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査報告書」(総務省地域力創造グループ 過疎対策室、平成23年3月)がまとめた「集落の問題発生状況」が示されています。岡﨑氏が「将来社会形成型課題群」に分類する課題では、伝統的祭事の衰退、地域の伝統的生活文化の衰退、伝統芸能の衰退、農山村風景の荒廃などが深刻になりつつあることが窺われます。

 

月刊地域づくり 第308号 地域づくりを担う新しい人材育成