小形利彦『山形県済生館の洋学史的研究』


 この度、小形利彦先生(日本大学山形高等学校)より、『山形県済生館の洋学史的研究』(大風印刷・出版、2011年6月24日発行、四六判、本文271頁)を御寄贈いただきました。
 小形先生は、岩手大学大学院修士課程で藤原暹先生に洋学史研究の指導を受けられ、後に東北大学大学院に進み博士学位論文を提出、博士(文学)を取得されました。本書は、母校の日本大学より昭和50年(1980)・平成18年(2006)に受領した学術研究助成金研究の成果です。
 明治時代にオーストリアより来日し各地の医学教育に尽瘁したアルブレヒト・フォン・ローレッツ(1846〜1884)に関する、著者の20数年に及ぶ研究の集大成であり、第一章「ローレンツの生地をたずねて」、第二章「山形県済生館医学寮教頭」、第三章「山形医学校」の三章構成。巻頭には関連写真20点、本文中にも図版が豊富に掲載されており、巻末にはローレッツ関係年表、主な参考文献、主要人名索引を収録しています。
 このうち第一章は昭和58年(1983)から平成4年(1992)までオーストリアで実施した現地調査をもとに、ローレッツの業績の知的環境を考察すると共に、来日の理由や経歴、来日中の足跡について報告。第二章では山形県済生館医学寮教頭としての活躍を工藤満寿司『山形県病院雑記』を手がかりに論述し、第三章では済生館医学寮が医学校通則による乙種の山形医学校に改組されたことを中心に、開校より廃校までの経緯、私立病院済生館を経て現在の山形市立病院済生館となるまでを論述しています(本書「むすび」、236頁)。
 貴重な研究成果を恵与くださいましたことに感謝申し上げますと共に、藤原暹日本学記念文庫(御嶽神明社)に収蔵させていただきます。