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『明治神宮以前・以後――近代神社をめぐる環境形成の構造転換』

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 藤田大誠、青井哲人、畔上直樹、今泉宜子編『明治神宮以前・以後――近代神社をめぐる環境形成の構造転換』(鹿島出版会、2015年2月20日発行)を出版社様よりお贈りいただきました。誠に有難うございます。
 近代日本の都市や地域社会における、神社に求められた機能や役割について、大正期の明治神宮造営をメルクマールと捉え、神社境内の環境形成におけるダイナミックな構造転換の研究を試みた論文集で、目次は次の通りです。

 序論 近代神社の造営をめぐる人々とその学知――本書の目的と概要(藤田大誠)

 

第Ⅰ部 神社造営をめぐる環境形成の構造転換

 第1章 神社における「近代建築」の獲得――表象と機能、国民と帝国をめぐって(青井哲人

 第2章 戦前日本における「鎮守の森」論(畔上直樹)

 第3章 帝都東京における「外苑」の創出――宮城・明治神宮・靖國神社における新たな「公共空間」の形成(藤田大誠)

 

第Ⅱ部 画期としての明治神宮造営

 第4章 明治神宮が〈神社〉であることの意義――その国家性と公共性をめぐって(菅 浩二)

 第5章 近代天皇像と明治神宮――明治聖徳論を手がかりに(佐藤一伯)

 第6章 外苑聖徳記念絵画館にせめぎあう「史実」と「写実」――北海道行幸絵画の成立をめぐって(今泉宜子)

 第7章 森林美学と明治神宮の林苑計画――近代日本における林学の一潮流(上田裕文)

 第8章 明治神宮外苑前史における空間構造の変遷――軍事儀礼・日本大博覧会構想・明治天皇御大喪儀(長谷川香)

 第9章 明治神宮林苑から伊勢志摩国立公園へ――造園家における明治神宮造営局の経験と意味(水内佑輔)

 

第Ⅲ部 近代における神社境内の変遷と神社行政

 第10章 神田神社境内の変遷と神田祭――祭祀・祭礼空間の持続と変容(岸川雅範)

 第11章 明治初年の東京と霧島神宮遥拝所(松山 恵)

 第12章 近代神戸の都市開発と湊川神社――一九〇一年境内建物立ち退き問題から(吉原大志)

 第13章 法令から見た境内地の公共性――近代神社境内における神社林の変遷と公園的性格(河村忠伸)

 第14章 近代神社行政の展開と明治神宮の造営――神社関係内務官僚の思想と系譜から(藤本頼生)

 第15章 近代神社の空間整備と都市計画の系譜――地域開発・観光振興との関わりから(永瀬節治)

 

第Ⅳ部 基礎的史料としての近代神社関係公文書

 第16章 基礎史料としての東京府神社明細帳――「東京府神社関係文書」目録解題(北浦康孝)

 第17章 山野路傍の神々の行方――「阿蘇郡調洩社堂最寄社堂合併調」一覧解題(柏木亨介)

 

あとがき(藤田大誠)

索引

執筆者略歴

 あとがきに「この学際的論文集が世に出ることにより、今後とも多様な人々が集う研究アリーナ(討議場)で、議論が深められることを心より願い」と述べるように、胸襟を開いて共同研究にあたる環境づくりに努力を重ねてきた編者の誠意が、本書の大きな原動力になったと思われます。そして、明治神宮国際神道文化研究所の出版助成などの心配りが、本書を実現させる暖かい支援になったと拝察されます。

 すべて拝読しないうちに、500頁を超える大著についてコメントするのは無礼と思いつつ、手にとって一部に目を通して、ひとつ感じたことがあります。

 それは、平成32年(2020)に鎮座百年を迎えようとしている明治神宮の教学研究の歩みです。日本を代表する神社とはいえ大正時代に創建した歴史の浅い明治神宮において、「叢書」を編むことの重要性を明治神宮役職員にご教示され、試行錯誤の中で献身的に、同じ神職の心境で、編纂事業に尽瘁されたのは、今年3月に國學院大學教授を退かれる中西正幸先生でした。平成12年より18年まで刊行に7か年、構想からはさらに多くの歳月を費やした、鎮座80年を記念する『明治神宮叢書』全20巻の編纂・刊行事業が、本書に収められた研究成果に果たした貢献は少なくないように思われます。 

明治神宮以前・以後: 近代神社をめぐる環境形成の構造転換

明治神宮以前・以後: 近代神社をめぐる環境形成の構造転換