一関と周辺の熊野信仰(1)

熊野権現のお告げ

 令和4年(2022)10月23日(日)、岩手県一関市(いちのせきし)花泉町老松の老松みどりの郷(さと)協議会と宿(しゅく)集落の共催で「おらほのお宝めぐり」が開催されました。地元の義民である千葉惣左エ門供養地蔵尊と、同じく地元の道慶寺・大祥寺の開祖である月泉和尚が坐禅をした坐禅石を、案内人の千葉安男先生とともに訪ねる企画で、来年3月で閉校する老松小学校3年生児童と保護者などが参加しました。当日は都合により、花と泉の公園での開会式しか参加できませんでしたが、配付資料をいただきました。

 坐禅石のいわれによると、道慶の庵に仮住まいしていた月泉和尚の夢の中に熊野権現があらわれ、そのお告げによって大物見山の平たい石の上で坐禅すると、西の方に白い龍が降りたので、その霊地を永住の地と定め、大祥寺の開祖となったそうです。

 熊野権現という神様のお告げによってお寺が開山されたという言い伝えは、とても興味深いと思いました。

 ちょうどこの日の朝、一関市南町の皆様が管理している熊野神社の例祭を奉仕させていただき、前日の22日(土)には、一関市弥栄の熊野神社例祭をご奉仕しました。

 こうした機会に、一関と周辺の熊野信仰について、少しずつ考えてみたいと思いました。

 

室根神社の本宮と新宮

 ところで、岩手県一関市は、平成30年(2018)に和歌山県田辺市(たなべし)と姉妹都市提携を結んでいます。一関市のホームページによると、昭和58年(1983)に旧室根村と旧本宮町との間で締結した友好都市提携を新市が引き継ぎ、提携35周年を節目に姉妹都市として提携しました。

 一関市室根町に鎮座する室根神社には、本宮と新宮があり、このうち本宮は養老2年(718)、鎮守府将軍大野東人元正天皇の勅命を受け、蝦夷降伏の祈願所として、紀州本宮村の熊野神を勧請したとされています。このような歴史的なゆかりから、昭和58年に旧室根村と旧本宮町が友好都市提携を結び、さらに平成30年には、友好都市提携から35周年、熊野神勧請から1300年を迎える大きな節目に、両市の関係をより深めるため姉妹都市として提携したということです。室根神社特別大祭、田辺市本宮町訪問の旅など、一関市室根友好交流推進協議会が中心となって交流事業を推進しています。

 一関市はさらに、和歌山県新宮市(しんぐうし)と令和3年(2021)に友好都市提携を結びました。 

 室根神社の新宮は正和2年(1313)、和歌山県新宮市にある熊野速玉大社の熊野神の分霊を勧請したとされています。平成30年に挙行された室根神社勧請1300年祭を機に、両市の関係を確認し、この歴史的なつながりを礎として、相互の交流や両市の発展につなげるために友好都市として提携したとのことです。室根神社特別大祭、首長表敬訪問などの交流事業が行われています。